大切に使ってきた設備を強みに変える。制御部品の刷新で実現する設備DX

「30年以上前の設備だから、もう使い続けることはできない。」
制御部品の廃版や故障リスクが増えるなか、このような判断を迫られている製造現場は少なくありません。
しかし、長年大切に整備されてきた機械には、部品を交換しながら守ってきた性能だけでなく、現場の工夫や加工技術も蓄積されています。設備を丸ごと更新することが、必ずしも最善とは限りません。
T-SmartArunが選んだのは、機械本体を活かしながら、古くなった制御部分だけを最新の機器へ置き換える方法でした。
❝ 大切に使ってきた設備の価値を残し、制御の刷新によって新たな強みに変える ❞
今回は、長年培ってきた加工技術を受け継ぎながら、生産の継続、省力化、品質向上を実現した設備DXの取り組みをご紹介します。
改善前の課題
機械はまだ使える。しかし、制御部品が手に入らない
日本の工場では、導入から30年以上が経過した設備も数多く稼働しています。
当時の設備には現在のような産業用コンピューターが搭載されていないものも多く、制御盤の中にはタイマー、リレー、カウンターなどが数多く配置されています。それぞれの機器が複雑に連動することで、機械の動きを制御していました。
モーターやロールなどの駆動部分は、長年にわたって点検、整備、部品交換を重ねてきたため、現在でも十分に使用できる状態です。一方で、制御に使われている機器には製造が終了したものが増え、故障しても同じ部品を入手できないケースが出てきました。
機械本体はまだ使えるにもかかわらず、ひとつの制御部品が故障しただけで生産を継続できなくなるおそれがあります。
設備を丸ごと更新すれば多額の費用がかかるだけでなく、長年の改善によって設備に蓄積されてきた加工条件や現場のノウハウまで失われる可能性がありました。

構築した仕組み
T-SmartArunでは、設備を丸ごと更新するのではなく、長年使用してきた機械本体を活かしながら、老朽化した制御部分だけを新しい機器へ置き換えました。
制御盤内に並んでいた旧式のタイマー、リレー、カウンターなどの役割を整理し、産業用コンピューターによる制御へ移行。操作部分にはタッチパネルを採用し、機械の運転状態や設定内容を画面上で確認できるようにしました。
さらに、ネットワーク環境やパソコンとも連携し、設備の状態や運転情報を確認できる仕組みを整備しました。異常が発生した場合には、画面表示やパトライトによって、作業者が状況を把握しやすくしています。
制御を新しくする際には、単に以前の動きを再現するだけではなく、長年の運転で蓄積されてきた調整方法や加工条件、現場の改善内容も新しい制御へ反映しました。
❝ 機械本体と培ってきた加工技術やノウハウを残しながら、制御部分だけを現在の技術へ置き換える ❞
これにより、設備の強みを失うことなく、生産を将来へつなげられる仕組みを構築しました。
設備を丸ごと更新しないという選択
古い設備だからといって、すべての部分が使えなくなっているとは限りません。
長年にわたって丁寧に整備されてきた設備には、その工場の製品や加工方法に合わせた改良が積み重ねられています。作業者が使いやすいように調整された部分や、安定した品質を生み出すための工夫もあり、それ自体が会社独自の技術になっています。
設備を丸ごと新しくすると、多額の導入費用が必要になるだけではありません。加工条件の再設定、品質の確認、作業方法の変更、社員への教育など、設備を安定稼働させるまでに多くの時間と労力がかかります。
そこで、まだ十分に使える機械部分は残し、入手や保守が難しくなった制御部分を優先して更新しました。
既存設備の価値を見極め、必要な部分から段階的に新しくすることで、設備投資を抑えながら、生産を止めるリスクの低減と将来のDX化を進めることができます。
得られた効果
作業の省力化
これまで複数のスイッチやつまみを操作していた工程を整理し、タッチパネルから分かりやすく操作できるようにしました。
設備の状態や異常の内容も画面やパトライトで確認できるため、作業者が制御盤を確認する負担や、トラブル発生時の原因調査にかかる時間を減らすことができました。
品質の安定と向上
設備の動作や加工条件を産業用コンピューターで制御し、設定内容をタッチパネル上で管理できるようにしました。
作業者による操作や設定のばらつきを抑え、長年使い続けてきた設備の特徴を活かしながら、加工品質の安定と向上につなげています。
技術とノウハウの伝承
これまで熟練者の経験に頼っていた操作方法や設備の動かし方を整理し、制御プログラムやタッチパネルの設定に反映しました。
設備を動かすために必要な条件や手順が分かりやすくなり、若い社員や経験の少ない作業者でも、設備の仕組みを理解しながら操作できるようになりました。
長年培ってきた加工技術を、特定の担当者だけの経験として残すのではなく、会社の技術として次の世代へ引き継げる仕組みになっています。
使用した設備・システム
今回の制御部分の刷新には、次の設備とシステムを使用しました。
- 産業用コンピューター
- タッチパネル
- ネットワーク環境
- 管理・確認用パソコン
- 異常を知らせるパトライト
- 新しい制御盤および制御機器
設備の用途や既存の構造に合わせて必要な機器を選び、現在の動作や加工条件を確認しながら、新しい制御システムへ置き換えています。

古い設備を、これからの強みに変える
設備の古さは、必ずしも弱みとは限りません。
長年にわたって安定した製品を生み出し、現場の改善が積み重ねられてきた設備には、新しい設備にはない価値があります。大切なのは、すべてを新しくすることではなく、残すべき部分と変えるべき部分を見極めることです。
今回の取り組みでは、機械本体と加工技術を残しながら、保守が難しくなった制御部分を刷新しました。さらに、タッチパネルやネットワーク環境を導入したことで、将来的なデータ収集や稼働状況の見える化にも展開できる設備になりました。
T-SmartArunが目指しているのは、最新の技術を導入することだけではありません。
現場で大切に使われてきた設備と、そこで培われた技術を理解した上で、必要な部分から改善していく。そうすることで、古い設備をこれからも生産を支える自社独自の強みに変えることができます。
まとめ
今回の取り組みでは、30年以上前から使用している設備の機械部分を残し、保守が難しくなった制御部分だけを新しい機器へ置き換えました。
これにより、設備を丸ごと更新することなく、生産を継続できる環境を整えるとともに、作業の省力化、品質の安定、技術の伝承につなげることができました。現在、この仕組みは実際の生産設備で運用されています。
古い設備を新しい設備に置き換えることだけが、DXではありません。長年大切にメンテナンスし、技術や現場の工夫を積み重ねてきた設備だからこそ、活かせる部分を残しながら、必要な部分だけを新しくすることも、製造現場に適したDXの形です。
❝ 設備を使い続けた年月は、技術とノウハウを積み重ねた年月です。制御を刷新すれば、その蓄積はこれからの強みに変わる可能性を秘めています ❞

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